「蔵飛★ロマンティック」ひなコロリン様より、ボーナスSS頂ました♪
2012.1.18のブログ記事から萌え広がった「涙拭いてよ!!」を飛影verで書いて下さいました!!
まさかまさか、涙事変がここまで展開しようとは私自身、思いもしませんでしたww
すんごい可愛いお話、ありがとうございました〜♪♪♪
仕事を終えて自宅に帰ってくると…あるまじきことに飛影がキッチンに立っていた。
ソファーでくつろいでいるかベッドで昼寝ならぬ夕寝を決めているかのどちらかだと決め付けていた俺は大袈裟にも持っていた鞄を落としてしまった。
「帰ったのか?」
「た、ただいま…何してるの?」
「見てわからんか?料理してる」
魔界の炎でなくエプロンを身に纏い、剣ではなく包丁を握る。
何とも摩訶不思議な図だった。
「一体何?どうしたの?熱でもあるの?どっかで変な物食べたりした?それともまた躯に妙薬盛られたとかーー…」
慌てて額を触ろうと近づいた俺に飛影は「一遍に言うな!」威嚇するように手に持つ刃物を突き出す。
「うわぁ!包丁!それ包丁ですから!」
慌てて一歩下がった俺に、飛影は真っ赤な顔をして怒り狂ったかと思えば急に俯き…
「ハンバーグの作り方を教えろ…」
小さく小さく呟いた。
よくよく事を聞けば単純な話。
「え〜!?オメー、ハンバーグも作れねーの?ダッセー!俺でさえ作れるゼ?」
「なんだと幽助!作れないとは言っていない!作らないだけだ!」
「ほほー、なら作って来いよ。あ、蔵馬が作ったヤツそのままとかナシだぜ?」
「貴様は相変わらず頭の悪いヤツだな!作れるといっただろう!」
…と、まぁ。こんな感じだろうか。あくまで想像だが絵に描いたようにその場の口論が頭に浮かんだ。
過程はどうであれ、この飛影に料理をさせようとは幽助はいつだって飛影をノせる天才なんじゃないかと思う。
「じゃあ早速始める?先ずは玉ねぎを切りましょう」
言われるまま飛影は玉ねぎを剥き、ストン…包丁を落とした。
うん、割と手つきは悪くない。
本来戦術の飲み込みはピカイチなんだ。刃物違いとは言え、意外にも簡単に操るようになるかもしれない。
「次は薄く切って。そしたら反対にして今度はこれくらいに小さく刻んでいくんだよ。うん、上手、上手」
素直に「悪くない」と表情に出す飛影はとても得意げだ。
すぐに真剣な眼差しに直り、無心に包丁を動かす飛影の横顔は、新しいおもちゃで遊ぶ純粋なこどものようにも見えた。
トン、トントン…軽快な音がしばらく続いた。
かと思えばパタリとその動きが止まる。
「どうしたの、飛影?」
うっ…と呻き出した飛影からまさかの雫が一粒落ちた。
「なんだコレ…くっ!何の攻撃だ!染みるっ」
「あはは!玉ねぎだもんね。玉ねぎには硫化アリルって成分が入っててね。切ってると目が染みて涙が出てくるんですよ」
「何物だそれは!そんなの、知らん!畜生、っ!」
「あー、その手で拭いちゃダメですって。もっと染みますよ」
両手を玉ねぎだらけにした飛影は、目を何度もしばかせてどうにも出来ない手を泳がせている。
「おい、蔵馬!コレどうにかしろ!」
「えー、しょうがないなぁ…」
ポロポロと大きな瞳から次々にまな板に落ちていく粒。
「…泣いてる君なんて、こーゆー時にしか見れないからずっと見てたい気もするけど…」
キッ、と睨む瞳はめいっぱい潤み今にもまた雫が溢れ出しそうだ。
あぁ…すっごくキスしたい。泣き顔に煽られるなんて言ったら、また「変態野郎」と罵られるんだろうな。でも…
「…すっごく可愛い」
「うるさいっ!いいから涙拭けよ!」
「はいはい」
肩を抱き、引き寄せ、唇を飛影の目元に寄せ…親犬が子犬にするように優しく舐め取っていく。
目頭から目尻にかけて何度も。
くすぐったいのか飛影の瞼はキュッと閉じられ、睫毛を這う舌が塩気を覚えピリリと刺激された。
「ふふ、しょっぱい…」
「なんて拭き方だ」
「味見ですよ。味見」
頬に唇を移動させ、そこもペロリと舐めた。
「美味しい…」
「チッ、味見は後で嫌ってほどさせてやるから、今は手じゃなく口を動かせ!」
唇へのキスを拒み、ぐすっ…と鼻をすする飛影が包丁をわざとらしく下に向けた。
矛先はサワリ飛影の腰を撫でていく俺の手だ。
「味見…ねぇ?ハンバーグの後はメインディッシュがあると喜びます。楽しみにしてますよ〜」
チュッともう一度頬に唇を落とし、飛影の目的を遂げるために希望通り手ではなく口と指示を出していった。
真っ赤に染めた頬で「せめてデザートと言え…」
と言う、目的を遂げた飛影をしっかり味付けして美味しくいただいたのは言うまでもない。
END